上京して3週間がたった。
私はこの春宮城の大学を卒業し、東京で満員電車に揺られる毎日を送っている。宮城では、満員電車どころか電車の席が埋まっていないこともある。これが東京の洗礼だ。
そんな私は「IT系」と言われるGENZに就職した。
「テストエンジニア」
文系の私がエンジニアとつく職業に就くとは何と面白い人生なんだろうか。しかし、文系だからといって、文章能力に突飛な才能があるわけでもないことには触れないでおこう。
この件では、地方出身の私が、東京の「IT系」に就職を決めた大学4年生の年を振り返っていく。
4月 地元に就職を決める
大学内で「自己分析」「企業研究」「面接対策」の言葉が飛び交うようになった。私の通っていた大学は東北の就職には強く、私も周りの友人と同じように地元に就職をすることに決めた。そこには何かをやりたいという意思もなく、これまでと同じように敷かれたレールを走る気持ちであったと思う。
エントリーシートを書くのも時間がかかるし、面倒だったから、OB・OGが多くいる会社にエントリーした。その中で、実家から10分で行ける企業の一般職の内定をもらえた。
今思えば、高校の選び方のようだった。OB・OGも多くいるし、大してブラック企業だと噂があったわけでもなかったから、就職活動を終わらせた。
そこからは、大学1年生のコロナ期間を取り返すようにひたすら遊んで、バイトをしていた。
大学時代のアルバイト
私のアルバイトはポーカーディーラーだった。私は元々ルールも何も知らなかったが、偶然求人を見つけて、ディーラーの仕事の珍しさと知らない世界への好奇心で働くことを決めた。入りたての頃はすべてが分からないし、ディーラーの技術や所作がすぐに習得できるものではなかったから、シフトに入ることさえ迷惑なんじゃないかと思っていた。
そこから毎日出勤の30分前に行って練習し、プライベートでお店に行ってルールを覚えるようにした。そうしたら、上達もするし、何よりお客さんに話しかけてもらえるようになって、大学では考えられないぐらい交友関係が広がった。
ポーカーを知らない人は、ポーカープレイヤーは怖い人が多いと思うだろうけど、ポーカーを通して出会った人はみんな優しすぎるぐらいだった。何より、平日に夜12時近くまで遊ぶ体力、ほぼ毎日お店に来ることができる財力は自分が社会人になって改めてすごい人たちだったと実感する。ポーカーというゲーム自体もだが、心から尊敬できる人たちに出会えたことがディーラーをして一番良かったことだ。
お客さんには、大学中退して起業するとかプロゲーマーとか自分の知らない世界の人が多かった。私は敷かれたレール以外の道があることを頭では分かっていたつもりだったけど、ポーカーを通して知り合ったお客さんと関わることで、やっと心から理解できたと思う。
その中には自分の世界を広げる怖さとか面倒臭さもあったとは思うけど、バイトを通して初めて何かを自分の意志でやりたいと思った。
7月 上京の可能性が出る
内定をもらった友人と遊んだり、アルバイトをしたりと大学生らしい毎日を過ごしていたある日、だらだらと携帯を見ていると、就活をしていた時に入れていたオファーアプリがまだ入っていたことに気づいた。思い出せば、オファーがあると、多少自己肯定感があるから、残していた気もする。
宮城県の企業からがほとんどだったが、1つ東京の企業からオファーが来ていた。しかも文系の私にエンジニアの職種のオファーだ。それがGENZだった。
アプリ内で登録していた私のプロフィールを本当に見たのかと少し思ったが、1つだけ東京のIT系企業という異質さに興味が沸いて、面談を受けてみることにした。
7月 カジュアル面談を受ける
人事の方には、他社の面接などで言っていない小さいふわふわとした目標も話した。本当は県内の大学じゃなくて美大に行きたかったこと、デザイナーになりたいから大学入り直そうか考えていること、ポーカーの話、ライブ配信の話、、、
私自身やりたいことも分からなかったし、あったとしてもどうしていこうかとふらふらした思考であったと思う。そこで人事の方に、
「GENZで何をするか、何ができるかは一緒に考えていきましょう。また、何をするかではなく、誰と働くかも大事です。」
と言われた。この面談を受けたとき、ディーラーのアルバイトの面接とどこか状況が似ている気がした。自由な中に真面目さがある社風で、テストエンジニアという職業もディーラーの仕事と似ていると思った。また、初の新卒採用という前例のない環境を選ぶ同期はどんな人なのか、何より上京してエンジニアとして働く自分がどうなるのかに興味が沸いた。
そんな感じで、私が働きやすかったディーラーの環境と似ていること、まだ自分が知らない分野であること、新卒1期生に対する好奇心からここにしようと決めた。
8月 最終面談を受ける
8月末、最終面談を受けた。最終面談の時に初めて会社に行った。最終面談を受ける時点ではGENZに行きたいとは思っていたからそれなりに緊張したと思う。
それでも選考を受けようと思った自分の感覚を信じたかったし、私は割と我が強いようで他の企業に言っていたような嘘の志望理由も言いたくなかったから、自分が一番時間をかけてきたポーカーについてひたすら話した。大学の話なんて一切しなかった記憶がある。それでだめだったら、縁がなかったと思って、普通に仙台で働こうと思っていた。
その結果、内定をもらうことができた。これで私がGENZに入ることが決まった。
現在
私は大学4年の夏に急に東京の「IT系」への就職に方向転換した。社会人になって4週間目、まだまだ分からないことも多いし、一人暮らしは疲れるし、東京は人が多いし、色々と踏ん張り時だと感じる時はある。でも新卒一期生という環境を選んだ同期がかなり個性が強くて興味深いということだけで目的の一つは達成したし、毎日楽しいと思えているから、良い選択だったと思っている。