ITベイビーに施される、IT英才教育
大学の卒業式から2週間、就職活動で大変お世話になったリクルートスーツを久々に身に纏った。
将来に思いを馳せる余裕もなく、目の前の「入社」という大きな転換期に緊張していた。
入社後2日目、あっという間に始まったITベイビーの私に施されるIT英才教育の数々。
IT用語やテストの仕組みを学ぶ座学は目が回るようであったが、初めて知ることばかりで、
あれ?面白いじゃないのよ、IT!
という気持ちになっていた。
そう、なんだかITは面白いのだ!
どこがといわれると難しいが、
博物館で恐竜の化石を見たときのような、
テレビでお菓子工場の裏側をみたときのような、
【とても興味があるわけではないけど、すごいもの見たな、という少し高揚した気持ち】
が研修中に度々訪れた。
そして始まる、GENZのメイン業務である「テスト実施」の演習。
(ITベイビーの私はテスト実施を、見本と手元にあるものを照らし合わせる間違い探し、と認識していた)
見つけた間違いを誰にでもわかるように書く作業。
いやはや、これは文系の私でもできるぞ。
なんなら、間違いの記入(不具合票の記入という)は文系の私、本領発揮では?
元々文字を紡ぐのが好きな私は、不具合票の記入に楽しさを見出していた。
引きずり込まれる、不具合票の底なし沼
楽しさを見出していた私を突如として引きずり込んできたのは、底なし沼であった。
不具合のタイトルは簡潔に?でもこれだと言葉が足りない気がする!
再現手順?どこまで詳細に書けばいいの?
テスト環境…ブラウザのバージョンなんて気にしたことないよ!
どこまで簡潔に、詳細に書けば良いのかと模索すればするほど、沼の奥に引きずり込まれる感覚。
…あれ、なんか、難しくない?
不具合票の記入では、不具合のタイトルに簡潔さが求められる。
例え、そのタイトルのみに目を通しても、不具合の正体が他の人にもわかるように書く必要があるのだ。
一方タイトル以外の、どのような不具合が、どのような方法(再現手順という)で、どのくらいの頻度(再現率という)で発生するのか、などはかなり詳細に記入する必要がある。
そう、不具合票の記入には「自分が理解していることを100%の状態で、他人にも理解してもらう」レベルの文章力が必要なのであった!
出来なくて凹む、というより、なんか悔しい…!
社長には「文系の方が向いている仕事」と言われたのに、
それが文系の私にできないなんて、
取り柄のない私が「文系の方が向いている仕事」に打ち勝てなかったなら、
そんなのITベイビー以前の話ではないのか!
私は己の文系としての意地と尊厳を守り、
不具合票という底なし沼を埋立地にしてやるべく、ひとり立ち向かった。
ここからは、私と不具合票の猛烈な戦いであった。
テストを実施しつつ、不具合を見つけ次第、「自分が理解していることを100%の状態で、他人にも理解してもらう」文章で、不具合票を記入し続けた。
不具合が毎回異なるため、テンプレートという同じ手法は不具合票に効かなかった。
毎回違うアプローチで記入しても、違う問題と書き方の手法が提示される。
埋まったと思った沼から、また新たな切り口で不足部分が露呈する。
その繰り返しであった。
総数約400のテスト実施を終え、その中の10数個から成る不具合票の沼は、
正直、埋立地とは言えないレベルであった。
小さな穴から沼の中身が噴き出したまま。
それは私がテスター(テスト実施を行う人の名称)としての未熟さそのものであった。
悔しさは残る。
ITベイビー以前に文系として向いている、という助言を受けた以上、
限りなくまっさらな埋立地にしたかった。
しかし、ITベイビーとしては十分の出来であった、と強気に評価したい。
まず、不具合票との戦いは楽しかった。
未知の開拓であり、自分の言語化能力を最大限利用する総力戦は、
【とても興味があるわけではないけど、すごいもの見たな、という少し高揚した気持ち】
を刺激した。
新卒✖️IT=??
とりあえず、
新卒✖️文系✖️IT=楽しい
ITベイビーはITの面白さに気づいてしまった。
面白さに気が付いたベイビーの成長速度は凄まじい。
掴まり立ちを始めた自分の成長に、ちょっとだけ期待。