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テスト自動化には夢がある。でも「仕事で使えるレベル」にするのは難しい理由

テスト自動化には「手動からの解放」という夢があります。
実際、現場だけでなく経営層やマネジメント層からも「自動化を進めよう」というトップダウンのリクエストが増えています。
「人手不足を補える」「品質を安定させられる」「生産性を上げたい」といった期待から、自動化は多くの企業で注目を集めています。

しかし、いざ取り組んでみると「動く自動化」を作ることと「現場で使える自動化」を作ることの間には大きな壁があります。
この記事では、ノーコード/ローコード/コーディング、それぞれの視点から難しさを整理し、現場が直面する課題を紹介します。

テスト自動化は簡単に始められる時代になった

かつては「テスト自動化=プログラミングスキル必須」というイメージが強かったですが、今は状況が大きく変わっています。
Autify、MagicPod、mablといったノーコード/ローコードツールの登場により、プログラミングに詳しくないテストエンジニアでも、ブラウザ操作の録画やドラッグ&ドロップで簡単に自動テストを作成できるようになりました。

さらに、ChatGPTなどAIがスクリプトのコーディングを補助してくれる時代です。
Playwright AgentsのようなAIエージェントツールを活用すれば、「このページのログインテストを作って」と自然言語で指示するだけで、テスト計画からスクリプト生成まで自動で作成できる仕組みも登場しています。

つまり、「動くテスト」を作るだけなら、技術の壁はかなり低くなりました。
自動化を試すこと自体は、もはや誰でもできる時代です。
しかし、それを「継続的に運用できるかどうか」は別の話になります。

それでも現場で「使えるレベル」にするのは難しい

ノーコードツールを使えば自動化は簡単に見えます。
しかし、実際に運用してみると「動作が安定しない」「テストが頻繁に壊れる」「保守に時間がかかる」といった課題が出てきます。
たとえば、画面デザインやボタン名が少し変わるだけでテストは失敗します。
ノーコードツールで作るのは簡単ですが、その後のメンテナンスでつまずくことも多いのが実情です。

一方で、PlaywrightやCypressのようなコーディング型ツールは、初期構築には手間がかかりますが、後からの変更や拡張がしやすいという柔軟性があります。
ただし、実際の現場運用を考えると、スクリプト言語だけでなくLinuxコマンド、Git、CIといった知識が必要になる場合が多いです。
また、アプリがReact、Flutter、iFrameなどで構築されている場合には、その環境に応じた要素取得の工夫など、応用力も求められます

つまり、「自動化できる技術」「仕事で使える技術」はまったくの別物です。
現場で役立つレベルにするには、技術力だけでなく、自動テスト設計力や運用ノウハウが欠かせません。

全部を自動化しようとすると逆に非効率

自動化に慣れてくると、「どうせならすべてのテストを自動化したい」という気持ちになりがちです。しかし、多くの場合は非効率に終わります

たとえば、UIが頻繁に変更される領域や、一度きりの確認テストまで自動化してしまうと、メンテナンスコストが膨れ上がります。
テスト自動化は、リグレッションテストのような繰り返し行われる領域こそ向いており、すべてのテストを自動化するのは現実的ではありません。

「自動化すべきテスト」と「手動で行うべきテスト」を見極める視点がなければ、かえって非効率な結果を招きます。
テスト自動化で大切なのは「どれだけ自動化するか」ではなく、人がより価値あるテストに時間を使えるようにすることです。

学習と運用の両立が最大のハードル

実際の現場では、手動テストなどの業務をこなしながら自動化を進めるケースがほとんどです。
そのため、自動化の学習検証環境の整備に割ける時間は限られていることが多いでしょう。

特に、納期やリリースサイクルが短い現場では、「まずは自動化以外の業務を優先せざるを得ない」状況も少なくありません。

このように、テスト自動化の壁は「技術的な難易度」よりも「時間の確保」「運用体制の維持」にある場合が多いです。
ツール選定だけでなく、チームとしての体制づくりと時間の確保こそが、自動化成功の鍵を握ります。

まとめ

テスト自動化は、もはや特別な人だけができることではなくなりました。
ツールやAIの進化によって、誰でも「動く自動化」を作れる時代です。
しかし、本当に価値を生むのは「動く」ことではなく、「現場で使い続けられる」こと。

そのためには、ツール選定だけでなく、メンテナンスを見据えた設計や、チーム全体で運用を支える体制が欠かせません。
そして何より、自動化を「目的」ではなく「手段」として捉え、人がより価値あるテストや品質向上に時間を使えるようにすることが、自動化の本当のゴールです。

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